=作者=    
 
書:暁風 秋葉曉子
 
大沼枕山

文化15年3月19日(1818年4月24日) - 明治24年(1891年)10月1日)は江戸時代後期から明治前期の漢詩人。名は厚、字は子寿、通称は捨吉、号は水竹居、臺領、枕山。下谷に生まれ、幕末・明治時代前期に活躍し、江戸時代最後の漢詩人といわれた日本漢詩史上重要な人物である。また、当時の代表的な詩社、下谷吟社を開き、ここを中心に江戸の風物を詠み続けた。
『房山集』 天保9年(1838)刊

 大沼枕山『房山集』から

   山村雑題四首 其三
 滿簾松影夕陽移  滿簾の松影 夕陽移る
 睡起看山亦一奇  睡起して山を看るも亦た一奇
 爐底香消燼猶煖  爐底 香消えて 燼猶ほ煖かなり
 也知假寐不多時  
也た知る 假寐 多時ならざるを
  =和訳=
 夕陽が斜めに差して、簾には松の影がいっぱいに映っている。
眠りから醒めてすがすがしい気持ちで山を見ると、夕陽に照らされた山はことのほか美しい。
香炉のなかの香は燃え尽きたが、灰はまだ暖かい。
してみると、間居眠りしたのはほんの短い時間だったのだな。
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 =作者=     

書:洗鵞 斎藤房江
 
大沼沈山(1818~1891)
20歳の天保八年(1837)房州を旅した時の作品集。
『房山集』から
 
 山村雑題四首 其二
 東阜西崦一牛鳴  東阜西崦 一牛鳴く 偶出柴門信杖行  偶たま柴門を出でて杖に信せて行く 林外知他茅舎近  林外知る 他の茅舎の近きを 繅車聲和水車聲  繅車の聲は和す 水車の聲
  =和訳=
 
東は丘、西は山。一頭の牛がのんびり鳴いている、隠棲するには最適。ふと思い立って柴の門を押し開け、杖にまかせて歩いてみる。林をはずれると他の家が近くにあることが分かる。糸車の音と水車の音が心地よいハーモニーを奏でている。

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 =作者=

梁川星巌(1789~1858)
天保12年(1841)房総の旅の詩から
手賀沼から筑波山を望む
     

書:岡安千尋
 
 滿城漠漠只塵埃  満城漠漠として只だ塵埃 不放吟眸時一開  放(ゆる)さず吟眸 時に一たび開くを 快意寧知有今日  快意 寧(なん)ぞ知らんや 今日有らんとは 天鵞湖上看山來  天鵞湖上 山を看て来たる
  =和訳=
  
江戸の町は塵や埃がもうもうと立ち込め、目を開けて景色を見ることもできない。今日は天気もよく澄み渡り、こんなすばらしい景色が見られようとは思いもよらなかった。手賀沼に舟を浮かべて、筑波の双峰を思う存分見ることができた。

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  =作者=

大沼枕山(18181891)が二十歳の天保八年1837
房総を旅したときの作品『房山集』から。題の山村は平久理。

     

書:貞華 冨樫美代子
 


 繚繞穿林一逕深  繚繞 林を穿ちて 一逕深し 三椽茅葹白雲岑  三椽の茅葹 白雲の岑 山家占得秋天福   山家占め得たり 秋天の福 柿剖紅珠栗剥金   柿は紅珠を剖(さ)き栗は金を剥(む)く                     「山村雑題四首」其一

 =和訳=
 
1本の小道が林を穿って奥深くまでくねくねと続く。
林を通り抜けると、3本のたるきに茅を葺いた粗末な家。峰には白い雲がかかっている。
山の中の家は秋の惠を独り占め。
柿は紅の真珠、栗は金の玉のよう。
 
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  =作者=

梁川星巖(17891858)が天保12年(1841
房総に旅立つさい詠った詩。

房総の特色をうまく言い表している

   

書:菅原有恒
 

 魚蝦潑潑酒如油  魚蝦は潑潑 酒は油の如し  暮雨桃花潭上舟  暮雨 桃花 潭上の舟 聞説江郷風物好  聞説(きくなら)く 江郷 風物好しと  老父乘興欲東遊  老父 興に乘じて東遊せんと欲す             「辛丑三月将東遊題壁二首」其二

  = 和訳=
 
 魚やエビがピチピチはね、酒はとろりとおいしい。
舟に乗れば、春の夕暮れ、雨のなかで桃の花が美しく咲いている。
このように水郷の風物はすばらしいという。
房総に遊ぼうと、興が湧き、心が騒ぐ。