鷲野先生の解説に続き、日本の吟界の第一人者の方たちによる吟詠を聞くことができます。どうぞお楽しみください。 
         
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 吟詠 初夏に寄せて

解説:鷲野正明
 
 放送予定日  令和3年6月26日(土)14時~14時15分  NHK
Eテレ
  
                和歌 大海の          源 実朝

              題不識庵撃機山図        頼 山陽

              望湖楼酔書           蘇 軾

              琵琶湖上作           室 鳩巣 
          

   
  和歌                      
                      源実朝
大海の磯もとどろによする浪 
   われてくだけて裂けて散るかも
磯をとどろかせて寄せる大海の荒波は
割れ、砕け、裂けて、四方に飛び散ってゆく
  題不識庵撃機山圖 不識庵 機山を撃つの図に題す
                     頼 山陽
鞭聲肅肅夜過河  鞭声粛々夜河を過る
曉見千兵擁大牙  暁に見る千兵の大牙を擁するを
遺恨十年磨一剣  遺恨十年一剣を磨き
流星光底逸長蛇  流星光底長蛇を逸す
上杉謙信の軍はひっそりと鞭の音もたてないように、夜のうちに犀川を渡り、川中島の敵陣に攻め寄せた。
武田側は明け方上杉の大軍が大将の旗を擁して迫ってくるのを見た。
謙信は十年の間一ふりの剣を磨いてきたが、信玄を討ち取ることができず、恨みを残すことになった。
打ち下ろす刀光一閃のもと、強敵信玄を取り逃がしたのである。
  望湖樓醉書    望湖楼酔書         
                    蘇 軾
黑雲翻墨未遮山  黒雲墨を翻して未だ山を遮らず
白雨跳珠亂入船  白雨珠を跳らして乱れて船に入る  
巻地風來忽吹散  地を巻き風来って忽ち吹き散ず
望湖樓下水如天  望湖楼下水天の如し
 黒い雲が墨汁をこぼしたかのようにみるみる空に広がり、山を覆いきらないうちに大粒の夕立の雨が真珠の玉を跳ね散らすように激しく降ってきた。と、たちまち強風が大地を巻き上げんばかりに吹き出し、雲や雨を散らすと、望湖楼の下の水は、空の色と一つになって青々と澄み渡った。
  琵琶湖上作    琵琶湖上の作       
                   室 鳩巣
琵琶湖上水連空  琵琶湖上水空に連なる
萬里虛無目撃中  万里虚無目撃の中
畳波涵天迭高下  畳波天を涵して迭いに高下し
群山分地各西東  群山地を分って各西東
孤村遠樹迷圖畫  孤村の遠樹図画に迷い
百尺長橋飛彩虹  百尺の長橋彩虹飛ぶ
獨覺芳洲生逸興  独り覚ゆ芳洲の逸興を生ずるを
不知此意幾人同  知らず此の意幾人か同じき
琵琶湖の水は空に連なり、
茫茫と果てしなく万里彼方まで目の前に広がる。
重なる波が天をひたして互いに上下し、
山々は東西の地に各おの分けられている。
樹々に包まれた一村はまるで絵の中に迷い込んだように美しく、
瀬田の唐橋は色鮮やかにまるで虹が浮かんでいるようだ。
草花が芳しくにおう芳洲では、独り風流文雅の興趣が湧き起こる。
しかし、私の心を理解してくれる人が他に幾人いるであろうか。