成田山 吟行会 会員漢詩

    成田山寫經          青木智江
求道行尋物外山    道を求め行きて尋ぬ物外の山
老僧説法墨香閒    老僧の説法 墨香の間
徐拈小筆念經寫    徐ろに小筆を拈じ 念じて経を写せば
忘却浮生心自閑    浮生を忘却して心自ら閑かなり

     訪成田山新勝       暁風  秋葉曉子
一山景勝在庭中    一菊は発ひて姸を争ひ霜葉は紅なり 
菊發爭姸霜葉紅    山の景勝庭中に在り
閑欲寫經般若室    閑かに経を写さんと欲す般若の室
皆空五蘊五行通
    皆空(かいくう)の五蘊(ごうん)五行に通ず

    寫  經            蹊山  薄井 隆 
墨滿硯池牋自薫    墨は硯池に満ち牋は自ら薫る
小翰閑執對經文    小翰閑かに執りて 経文に対す
精神一到纔書就    精神一到 纔かに書就れば
如望白蓮乘白雲    白蓮を望み白雲に乗るが如し


    成田山懷團十郎      蕗山  清水義孝
重來山道老家連     重ねて来る山道 老家連なり
各炙鰻鱺流白煙     各おの鰻鱺(まんれい)を炙りて 白煙流る
幻影頻生江都昔     幻影頻りに生ず 江都の昔
名優又到坐詩筵      名優又た到りて詩筵に坐すを
    新勝寺寫經        蕗山  清水義孝
小翰閑執對佳箋    小翰 閑かに執りて 佳箋に対す
獨入虛無尊像前    独り虚無に入る 尊像の前
般若心經三百字    般若心経 三百字
行成奉納愈悠然    行成り奉納すれば 愈いよ 悠然たり

    成田山新勝寺寫經 其一   河野幸男
唱名念佛菊香多     唱名 念仏 菊香多し
少筆時停墨又磨     少筆時に停めて 墨又た磨す
靜坐寫經塵外境     静かに坐して経を写す塵外の境
精神一到夢中過     精神一到 夢中に過ぐ

    成田山新勝寺寫經 其二   河野幸男
馥郁黃花滿梵宮    馥郁たる黄花 梵宮に満つ
鷗盟相坐道場中    鷗盟 相ひ坐す 道場の中
佛前忘刻無人語    仏前 刻を忘れ 人の語る無し
般若心經書寫工    
般若心経 書写すること工みなり

    成田山新勝寺寫經       杉田義久
颯颯西風古梵宮    颯々たる西風 古梵宮
香煙隱隱法堂中    香煙 隠々 法堂の中
執翰磨墨意塵外    翰を執り墨を磨せば 意 塵外
寫盡心經一切空    心経を写し尽くして 一切空なり

    成田山公園散策        杉田義久
古刹周邊日午暄    古刹周辺 日午暄かなり
騷人聚会歩山園    騒人 聚会して 山園を歩す
求詩追雅晩秋下    詩を求め雅を追ふ 晩秋の下
錦繍炎炎淸且姸 
   錦繍 炎々 清且つ姸

    成田山新勝寺寫經       長島ツタエ
秋光燦燦入堂淸    秋光燦々 堂に入りて清らかなり
閑坐方充唱道聲    閑坐すれば方に充つ 唱道の声
把筆凝神徐對紙    筆を把り神を凝らし徐に紙に対すれば
一家安穩眼前明    一家の安穏 眼前に明らかなり

    新勝寺菊花           濱村明弘
紺庭信歩獨觀遊    紺庭 歩に信せて独り観遊す
紅白黄花佛殿頭    紅白黄花 仏殿の頭
馥郁香漂多雅趣    馥郁として香は漂ひ雅趣多し
清霜獨傲自幽幽    清霜 独り傲りて自ら幽々

     成田山晩秋         濱村明弘
獨訪山中秋意濃    独り山中を訪ぬれば 秋意濃やかなり
閑聞隱隱晩來鐘    閑かに聞く 隠々 晩来の鐘
楓林霜後行方好    楓林 霜後 行くに方に好し
看盡紅於斜日舂    紅於を看尽くして 斜日舂(うすづ)く

    成田山新勝寺寫經      芳野禎文
紫煙裊裊菊香晨    紫煙裊々 菊香るの晨(あした)
詩友堂中揮筆頻    詩友堂中 筆を揮ふこと頻りなり
初識寫經尊佛法    初めて識る写経仏を尊ぶ法なるを 
心淸一日忘喧塵    心清くして 一日 喧塵を忘る

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