R7年春吟行会 小石川、湯島界隈を巡る
案内:岡安千尋
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令和七年春季吟行会は五月十七日(土)九時三十分、地下鉄丸ノ内線茗荷谷駅改札口に集合。
参加者は十六名。
鷲野会長からご挨拶をいただいた後、ガイド役の芳野理事から行程説明を受け、しとしと雨の中、占春園に向かう。
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| 1 占春園 |
茗荷谷駅から徒歩で十分。筑波大学の敷地に入る。
よく整備された敷地内には古木、大木が多い。にも拘らずよく手入れがなされており、目黒白銀の自然教育園の手つかずの樹木等とは異なり、人にやさしい繁茂なので気持ちがよい。
園の一部は筑波大付属小の教育実習の、自然観察園となっている。まことに恵まれた教育環境である。
あいにくのしとしと雨で足元に気を取られながらも、風情のある庭を見て歩いた。
花菖蒲の黄色の群生が印象に残る。
芳野理事による占春園の話
明治六年(一八七三)昌平坂学問所の文久三博士の一人芳野金陵は隠居のため小石川窪町の旧守山藩邸三三〇〇〇坪を購入して開墾、庭園を占春園と命名、文人を招いて詩歌を楽しみ、占春園の春夏秋冬の景観と当時の世相を「占春園雑記*」として記述した。
*金陵遺稿巻八 二六~二九頁 二松学舎大学図書館蔵 芳野赳夫氏寄贈
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| 2 小石川植物園 |
朝からの雨は止む様子もなく、傘の群れとなった私達は次の訪問先へと歩んで行く。
東京大学大学院理学系研究科付属植物園である。
小石川植物園は、徳川五代将軍綱吉の白山御殿跡地に設けられた小石川御薬園が前身。
白山御殿時代の名残の日本庭園、御薬園付随の小石川養生所の井戸も残存する。
面積は48880坪もあり、占春園から徒歩僅かの南側角の塀に届いたものの永遠に続くと思われる塀沿いを黙々と歩き十数分後正門に到着。入園料は500円。
集合時間と場所を確認して各自散策開始。同行した芳野道子氏情報では、下見の時期がソメイヨシノ林が満開。
人も少なくお花見の穴場とのこと。本日は葉桜のあふれる緑。以前訪れたメンデルのブドウ(メンデルが実験に用いた由緒あるブドウの分株)、ニュートンのリンゴ(ニュートンの生家にあった木の枝を接木したもの)を確認。
雨天のため、温室巡りで時間調整。健脚のお二人(濱村氏、仲野氏)は正門から遠い日本庭園まで見学されたとのこと。
小石川植物園を後にして茗荷谷駅に向かう。途中桜の名所播磨坂*を上る。
*播磨坂 松平播磨守の上屋敷に因む。当日はツツジが満開。
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播磨坂櫻竝木 播磨坂桜並木
與君數到樂陽春 君と数しば到りて陽春を楽しむ
爛漫櫻花風拂塵 爛漫たる桜花 風 塵を払う
首夏而今叢樹綠 首夏の而今 叢樹緑にして
雨中躑躅露紅新 雨中の躑躅 露紅新たなり
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茗荷谷駅から御茶ノ水駅に移動。
徒歩10分で神田明神を経由し男坂下の「章太亭」に到着。
このお店は長島理事の紹介で定休にも拘らずお店を開けて戴いた。
心の籠った手料理の数々。食事代は破格の料金で対応していただいた。
食事が終わったところで恒例により濱村理事より柏梁体作句のご提案。
韻は蒸韻および青韻。作品提出は即日も好し、後日も好しの何時ものルール。
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| 3 神田明神(神田神社) |
天平二年(730)に現在の大手町で創建されたと伝わる古社で、正式には神田神社。
元和二年(1616)江戸城から見て表鬼門守護の現在の場所に移された。
恵比寿様、大黒様、将門様(平将門)を祀り、縁結び、商売繁盛、除災厄除を願う参拝客で賑わう。
江戸三大祭りの一つ「神田祭」が有名。神田、日本橋、秋葉原、大手町、丸の内、旧神田市場、豊洲魚市場など百八町会の総氏神
私は20年前から湯島聖堂の斯文会の漢詩講座に通い、神田明神も折ある毎にお参りするのだが、近年、神田明神文化交流館が設立されてからより賑わいが増した感あり。
銭形平次の碑、神馬明(あかり)ちゃんなどを見て私も楽しんだ。勿論しっかりお参りもした。
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江戸總鎭守神田明神 江戸総鎮守神田明神
小徑茶房飮白醅 小径の茶房 白醅を飲む
信心拜廟果何回 信心して廟を拝すること果たして何回ぞ
賽人不絶社中賑 賽人絶えず 社中賑わうも
神馬安閑午睡催 神馬は安閑として午睡催す |
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| 4 湯島聖堂 |
神田明神から徒歩五分。
上野忍岡にあった林羅山邸内の孔子廟が五代将軍綱吉により湯島へ移され、規模を拡大したもの。
寛政九年(一七九七)その西隣に幕府直轄の昌平坂学問所が開設される。
現在の建物、大成殿、仰高門、杏壇門は関東大震災後、昭和十年(一九三五)に鉄筋コンクリート造りで再建された。
私自身が漢詩と関りを持つことになった大切な場所だが、二十年以上通っているとあまりに馴染みすぎてそこに変わらず在るということが当たり前になっている怖さを感じた。
斯文会に行く度に仰ぐ孔子像の傍に大きな夏蜜柑が季節になると沢山の実を落とす。偶々行楽の外国人に「食べられるか、拾ってもよいか」と聞かれた。「sure」と答えて彼らは喜んで持ち帰ったが私自身はまだ食していない。
大成殿ではわざわざ特別に斯文会のスタッフ(事務長)から内部説明をして頂いた。
特に雨に濡れた大成殿の鯱は美しかった。
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湯島聖堂 湯島聖堂
橋畔湯岡大樹連 橋畔湯岡 大樹連なる
綠甍鴟尾雨中煙 緑甍 鴟尾 雨中に煙る
入門靜仰尊師像 門に入りて静かに仰ぐ 尊師の像
堂裡吟詩更幾年 堂裡詩を吟ずること更に幾年
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| 5 聖橋 |
湯島聖堂を出ると、突然雨が止み、午後二時過ぎ、聖橋の上で解散となった。
聖橋の下は神田川。橋の欄干で多くの観光客がカメラを構えている。丸の内線、中央線、総武線三本の列車が交差するシャッターチャンスを待っているのだ。
神田川は付け足しなのか!況や聖堂をや。
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茗溪聖橋 茗渓聖橋
鬱蒼樹下一條川 鬱蒼たる樹下 一条の川
百尺飛橋古廟邊 百尺の飛橋 古廟の辺
絡繹人行猶若舊 絡繹として人行くは猶旧の若し
凭欄男女轉相憐 欄に凭れる男女 転た相憐れむ
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皆様、雨の中お疲れさまでした。又いつも的確に御指導下さる鷲野会長、何回も下見を重ね、程よい行程の立案、引率をして下さった芳野理事、長島理事、ありがとうございました
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